ぼく、まっさん

オッス!まっさんだぞ!

岡山でゲイバーに行ってみた話。

いらっしゃ~い!
待ってたわよ~こちらへどうぞ~!

金髪、美人で、赤いドレスに身を包んだ女性がハイテンションでそう伝えてくる。彼女はキャリー。岡山のゲイバーで働くゲイだ。
通されたのは奥の方にある、10名は座れそうな広いソファー席だった。一緒に来た三好さんがどうやらお得意様らしく、特別に用意してくれたみたい。

店内は似たようなソファー席が二つと、カウンターが8席。イスのない空間も合わせれば40人位なら入れそうだ。

キャリー!生二つ!

まだ空間に戸惑っている僕をよそに、三好さんは注文を終わらせる。キャリーがハイハイと返事をする所に、二人の仲の良さが見える。

店内には3人組の女性グループが二つと、スーツを着た仕事終わりらしきカップルが一組。あとはカウンターに2〜3名程の女性。
深夜の12時だが、なかなかどうして忙しそうだ。注文した生ビールを二人でのみながら、キャリーが席に来るのを待つ。

ごめ〜ん、お待たせ〜!

そう言いながら、バイトのゲイに接客を任せ席にきたキャリーと乾杯。背が高い上にヒールを履いているので180もある背丈が、座ると大体同じくらいの目線になった。少し安心する。
談笑しながらお酒を嗜む。あまりの可愛さと男の声のミスマッチのせいで、なんでもない一言でも面白い。
1時間ほど飲んだ後、写真を撮ろうと言った。すると「ちょっと待って~!」と言いながら、カウンターへ引き返した。写真用のライトを取るためだ。

これがあると可愛くなれるのよ~!

可愛さへのこだわりが年頃のJKだ。言う通りにライト有りで写真を撮ると、なるほどライト有りの方がよく盛れる。JKも真っ青な、美へのこだわりだ。

可愛くある。思うがままに、周りの目を気にすることなく可愛くある。彼女がここにいる大切な意味だ。日常社会から弾かれるゲイも、ここでは人から求められる存在となる。新しい世界を、一つ知った。

会計を終え、店を出る。先程までの賑やかな空間とは急に変わって、12月の夜風と深夜の静寂に包まれる。思うがままに生きている彼女を見て、少し羨ましくなった。