君がいない、この部屋で
心配ありがと!明日帰るね
そう言った君が、帰ることはなかった。
紅葉も終わり、木がその幹を露出する。季節が変わっても一緒だと思っていたのは、どうやら僕だけだったらしい。
仕事がうまくいかない日も、女ともめた話も。いつも君は笑って聞いてくれた。嫌な顔一つせず笑ってた。
さよならは、突然だった。
家に帰って、真っ暗な部屋に明かりをつける。いつもなら君が迎えてくれる6畳一間には、丸められた布団が鎮座していた。
洗面所を埋め尽くす化粧水も、気に入ってた5種類のシャンプーも、なくなっていた。しっかり残っていたのは、部屋の隅にある、1畳分はスペースを取っているケージ。
「ペットを飼う人間の気持ちがわからんわ~」
「そう?飼えば慣れるよ。」
中には、ペット嫌いな僕の話も聞かず君が持ち込んだフェレットがいる。最初はあれだけ憎んだ2匹も、今では可愛いと思えるようになってきた。
さよならはいつだって突然だ。当たり前にやってくる日常の大切さを、僕らは失うまで気付かない。
一人になった部屋はいつもより少しだけ広くて、少しだけ寂しい。いなくなってしまえと鬱陶しく思う日もあったけど、実際にいなくなると寂しいものだ。
かしゃん。じゃらん。
預けていた合鍵が、ポストを開けると落ちてきた。
この鍵をポストに入れたとき。君はどんな気持ちだっただろう。泣いていたかな。怒っていたかな。今は、笑っているかな。
ただ最後に一個言えることは。
貸した金、返して。。。。。。
※家がなくなった居候に35万円貸したら借りパクされた話を、恋愛風にまとめました、