ぼく、まっさん

オッス!まっさんだぞ!

幸せなクリスマスの裏側で

 

次から次へとやってくるケーキに、ただひたすらイチゴを乗せる。

 

殺伐とした、一切クリスマス感を感じさせない工場で、僕は今ケーキを作っている。

 

クリスマスケーキ製造のバイトを見たのは4日前。面白そうなので応募したが、まさかここまで過酷だとは思わなかった。

 

生クリームが塗られたスポンジケーキにイチゴを乗せる。それを8時間繰り返す。楽に聞こえるが、腰を曲げた状態で8時間立ち続けるのは中々過酷だ。眠たい時も、延々とケーキは運ばれる。

 

夜の9時からスタートし、翌朝6時まで作業は続く。1つのラインに25人並び、各々作業をこなす。

 

生地を切る、内側に生クリームを塗る、イチゴを乗せる、生地を重ねる、外側に生クリームを塗る、生クリームで飾りつけをする、イチゴを乗せる、チョコを乗せる、粉砂糖をかける。

 

これらの行程を終えると、初めてクリスマスケーキが完成する。

 

最初は喋りながら作ったが、それも最初の4時間まで。話題が尽きた後はただひたすらケーキにイチゴを乗せるのみ。

 

時計を見る

 

AM3:00

 

時計を見る

 

AM3:05

 

時計を見る

 

AM3:10

 

ここだけ時が止まっているのか?

 

時間よ早く過ぎろという思いを嘲笑うように、時計の針はゆっくり進む。

 

普段何気なく見るクリスマスケーキ。あの裏側に、こんな地獄の労働があったとは。全て機械作業で作っていると思っていた僕は、現実の過酷さに驚いた。

 

AM6:00

 

やっと全ての作業が終わった。帰ろう。その時、工場長の1言で作業場は凍りついた。

 

「残業2時間追加~!」

 

泣きそうだった。あちらこちらで、ケーキから解放されなかった落胆の声が上がる。隣のチョコ乗せ係の女の子は、まじで勘弁して。とキレていた。怖い。

 

結果PM9:00~AM8:00まで、ずっとイチゴを乗せ続けた。その数およそ10000個。

 

眠さと疲労を抱えながら帰路につく。

 

誰かの幸せは、誰かの労働によって支えられている。

 

その事実を強く実感した1日だった。

 

 

メリークリスマス。